『こころの携帯電話』 ―― それは、北海道で出会った1人のバスガイドさんから伺った言葉。
彼女は数年前、日本香堂が企画した招待バス旅行で添乗を務めてくださった、とても朗らかな方でした。
彼女のおかげで一行みな和気あいあいと、北の大地の旅を満喫し、やがて帰りの空港に近づいた時、彼女から乗客に贈られた挨拶の言葉は、型どおりの謝辞とはかけ離れたものでした。
「今回のお客様が、お線香の日本香堂さんと聞いて、天の計らいって本当にあるものだと感じました。
私事ですが、実は半年前に主人が亡くなりました。まだ結婚して間もない、とても短い夫婦の縁でした。
バスガイドという職業柄、新婚であっても家を留守にすることが多く、添乗の旅先からかける携帯電話が、私達夫婦の心通わせる、かけがえのない時間でした。
もうその電話も通じることはありません。今の私には、毎日お線香をあげ主人に話しかけるひと時だけが生きる支えになっています。
私にとって、お線香は、『こころの携帯電話』です」
『こころの携帯電話』 ―― その切なくも優しい響きの言葉は、2011年の3月11日以降、お線香を使われる方々の想いと どのように向き合い、どう寄り添っていくべきか、企業としてのあり方を自問しつづける中でいつしか私達の“合言葉”にもなっていました。
私達がお客様にお届けしているのは「お線香」という単にモノではない「お線香をあげるひと時の語らい」、不壊の絆を信じてたぐり寄せる、かけがえのない時間であることに、改めて認識を深めることとなりました。
そして「語らい」の多くは、誰にも知られず、各々の胸の内に収められ、分かち合う機会の少ないということも・・・。
“絆の時代”と呼ばれる今だからこそ、これまで看過ごしがちだった「お線香をあげるひと時の語らい」に、お1人おひとりの「心の声」に耳を傾け、共に支えあい癒しあうような社会の価値観の芽を育み、同時代を生きる人々と手を携えて、共感の輪を広げていきたい・・・。
そんな願いから2012年にオープンした本サイト、『こころの携帯電話ひろば』です。
〈大切な故人との心の語らい〉をテーマにこれまで皆様よりご投稿いただいた〈三行詩〉は、お蔭様で延べ4000篇に近く、共感のプラットフォームとして一定の役割は担えたのではないかと感じております。
折しも開設10年の節目を迎えた今年、三行詩のご投稿受付は一旦ここで休止とさせていただき、新たな展望の下またお目にかかりたく存じますが、それまでは三行詩全作品を収蔵し、自由に閲覧いただける“祈りの図書室”として運営に努めてまいります。
これまでのサイトご訪問に心より感謝申しあげますと共に、引き続きお引き立ての程よろしくお願い申しあげます。