やさしい時間~こころの携帯電話ひろば~

グリーフケアへの誘い


制作協力 ソナエ
別れの悲しみに寄り添い、そなえるための学びの章

グリーフとは

グリーフとは 「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」。出会った人たちとは、いつか必ず別れなければならない。世の理(ことわり)の一つです。家族や友人など大切な人たちも例外ではありません。別れの最たるもの、それが死別です。

 大切な人がこの世からいなくなる。想像しただけでも、心かきむしられるような思い、悲しみを感じるのではないでしょうか。実際に死別を体験すると、遺された人には様々な身体的、精神的な反応が起きます。喪失感、悲しみ、怒り、不安……。それが「グリーフ(grief)」です。一般には「悲嘆」と訳されることが多く、死別以外でも離婚や失職など喪失体験に伴って起きる反応を指します。普通ではない体験である「喪失」に対する、自然で正常な反応だといえます。

 グリーフには様々な症状があります。理由もなく泣き出す、空しくて何事もどうでもよくなる、むやみに忙しく立ち回るようになる、自分にも周囲にも怒りっぽくなる、眠れない――。生前にしてあげられなかったことを後悔して罪悪感をおぼえたり、人生とは、死とはといった問いを無限に繰り返したりすることもあります。症状は人それぞれで、強く出る人もいれば、周囲からはほとんどわからない人もいます。長く続く場合もあれば、短期間で終わる場合もあります。

 こうした状態の人に寄り添い、支えることを「グリーフケア」といいます。大切な人がいなくなったことを受け入れ、適応して新しい人生を過ごせるように援助するのです。我が国はかつて家族や地域コミュニティなど、グリーフケアを担う人が周囲にいることが多い社会環境にありましたが、現在では核家族化や非婚化が進み、家族の支え合い機能が弱まっています。地域コミュニティも揺らぎ、そうした役割を果たすことは期待薄です。病院で亡くなる人が大半を占めるようになったことから、死にゆく人を身近で看取る機会が減り、死とどう向き合ったらよいかがわからないという人も増えています。

 そこで、グリーフとグリーフケアを研究する必要性が出てきたのです。医師や看護師、宗教者、葬儀社、NPOといった第三者がグリーフケアを担う動きも、こうした流れから生まれました。

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