やさしい時間~こころの携帯電話ひろば~

三行詩応援メッセージ

大切な方への真心こもったマコトノハに寄せられた皆様からの応援メッセージをご紹介します。

三行詩応援メッセージ


やさしい時間
「こころの携帯電話ひろば」
事務局
皆様より格別のご厚情を賜ってまいりました「こころの携帯電話ひろば」三行詩は、お蔭様でこのたび満10年の節目を迎え、これを機に作品の受付を一旦休止させていただくこととなりました。これまでの歩みを振り返り、また新たな展望を開いて皆様とお目にかかれる日まで、しばしの充電期間を頂戴いたしたく、何卒ご理解を賜りますよう、切にお願い申しあげます。
尚、一区切りをつけるにあたり、第23期 選考委員賞の選出は、僭越ながら弊事務局にて務めさせていただきました。この10年、延べ四千篇にも近い作品すべてに接してきた“守り人”の我が儘としてご寛容くださいましたら、と願うばかりです。

【〈選考委員賞〉選評】

① りっちゃん さん 作
『毎日学校へ送ってくれた祖父 / 冬はいつも車を暖めて準備してくれたね / 冷えた車に乗るたび祖父の気持ちを思い出す』
毎朝お日様が昇るように繰り返される当り前の風景が、本当は無私の愛に満ち満ちた、かけがえのない恩寵と思い至る・・・その気づきこそ人生の醍醐味ともいえそうです。お祖父様から注がれた慈愛を胸に抱いた りっちゃんさんだから、今度はきっと誰かの“お日様”になれる人だと信じています。
② ありまじん さん 作
『「パパみたいな人と結婚したいなー」 / 聞こえましたか?お年頃の娘の告白! / へへっ…と照れ笑いする貴方が見えましたよ』
幼い頃の微笑ましいエピソードにとどまらず長じてもなお「パパみたいな」結婚相手を望まれるお嬢さんはとても素敵ですし、これまで手塩にかけて育ててこられた ありまじんさんのお手柄と申せましょう。そのご褒美は近い将来、ご主人様によく似た好青年のお婿さん(義理の息子さん)に恵まれることかも知れませんね。
③ すいれん さん 作
『また四人で暮らそう / 来世は絡んだ糸をほどいて / 楽しい家族として』
家族の縁で結ばれながら思うに任せず、感情の糸が縺れ合ってしまう・・・それも“忍土”と呼ばれる現世を生きる私達の切ない定めと申せましょうか。でも、だからこそ、生まれ変わって絆の結び直しを願われる すいれんさんの発意は、神々しいばかりの光を放ち、これから先の道筋を照らし出す燈火になると信じてやみません。
④ ふじてつくん さん 作
『「ホームにて優しい風が吹いてます」 / 春が好きだった君が上の句だけ残した短歌に / 「あなたの好きな春が来ます」と書きました』
瑞々しい友情から紡ぎ出された巧まざる句の連なりが、「優しい風」と一緒に青い春の澄みきった光までも届けてくれるような、とても爽やかな読後感でした。胸の奥に刻まれた穢れなき情景は一生の宝物ですね。久しぶりにサミュエル・ウルマンの「青春の詩」の一節を思い出しました。
⑤ あーさん さん 作
『コロナが怖くて 家籠りなの / 香で繋がる あなたとわたし / 今日は 五度目ね 仏壇の前』
第1回緊急事態宣言の解除後に私共が行った調査でも あーさんさんと同じように、ステイホーム期間中「大切な故人への語りかけが増えた」とご回答の方が“4人に1人”もいらっしゃいました。ソーシャルディスタンスの不自由さの中あらためて実感された“見えない絆”の距離の近しさ・・・コロナ禍明けの新しい日常下でも保ち続けたい“心の密”ですね。
末筆ながら、これまで三行詩のご投稿を通じて、普段は誰にも明かさぬ大切な胸のうちを分かちあってくださいました皆様に、あらためまして心より御礼を申しあげます。本当にありがとうございました。 やさしい時間「こころの携帯電話ひろば」事務局
博報堂DYグループ
AD plus VENTURE株式会社
オンライン偲ぶ会「しのぶば」
代表 勢村理紗さん博報堂DYグループ AD plus VENTURE株式会社 オンライン偲ぶ会「しのぶば」 代表 勢村理紗さん
想いは十人十色でありながら、そこにたくさんの「私も!」と思える共通点があることを感じました。私も28歳の時に母を亡くし、8年が経ちます。応援メッセージどころか、皆様の三行詩に、「私だけじゃないんだ」と、背中を押していただきました。
私たち「しのぶば」は、集まることが叶わない時にも、皆さんで共に故人を偲ぶ場を作りたいという想いで、「オンラインの偲ぶ会」と「追悼サイト」を作るお手伝いをしています。ご家族や友人の方々から寄せられるメッセージには、面識のない方同士でも、沢山の「私も!」があります。亡くなってもなお、みなさんの心に共に生き続ける、そんなお手伝いを続けていきたいと思っています。

【〈選考委員賞〉選評】

① もっきんどー さん 作
『お仏壇の 形見の携帯電話 / 今日も耳に当ててみる / 母さんの 懐かしい声が聞きたくて』
私も、母とのメールやチャットのやりとりが消せず、連絡先にも母の名前が残ったままです。「懐かしい声が聞きたくて」とコメントを書かれているその気持ちに共感し、涙しました。携帯を通してたくさんのやりとりがされるようになって、携帯にたくさんの思い出が遺っていきますね。普段の何気ないやりとりが無性に恋しくなります。
② 原稿呆詩 さん 作
『お母ちゃん / 申し訳ないねは / もうなしね』
「申し訳ないね」というお母様の優しさを「もうなしね」という温かい言葉で返されている、温かい思いやりに触れ、お二人の強い絆と支え合ってきた寂しさを感じました。一緒に時をすごされたからこその会話なのだろうと想像を膨らませながら、温かい気持ちになりました。
③ うえのひろき さん 作
『まだ会った事はないね。 / でも、じいちゃんの仕事仲間に会ったんだ。 / 雄姿っぷりを聞いて誇らしくなったよ。』
家族って不思議ですよね。おじいさまのお話を聞く機会を持てたことは、本当に幸運だなと感じます。その血を受け継いだ「誇らしさ」は、これから先もずっと大切な宝となりますね。おじいさまに思いを馳せる姿に胸が熱くなりました。
私も、母に会わせてあげられなかった孫達には、母の姿を伝えたいと強く思います。先の世代に、故人の勇姿を遺し伝える大切さを、この詩に改めて教えていただきました。
④ とも吉 さん 作
『行儀良く、遺影に納まる父を見て / 「お父さん、そんな人じゃ無いでしょう」と / やんちゃな父に煙草と甘納豆を供える。』
遺影はいつも同じ枠で、いつも同じ顔。それでも、お父様らしさを忘れずに持っていらっしゃるからこその、愛に溢れた三行詩に、はっとしました。お父様をお父様らしさそのままに想うことは、時が経つほどに難しくなると感じます。その方らしさを思い出し続けることが、なによりの愛情表現だと感じ、寂しさと温かい気持ちをお裾分けしていただきました。
⑤ ASHINA さん 作
『父よ父。おとうさん。 / 聞こえているかわからない。 / それでも言いたい。おれ幸せよ。』
お若く「伝え方のわからない私ですが」とコメントを書かれていましたが、亡きお父様へ伝えたいメッセージがぎゅっと込められた素敵な一言に、強くこころを打たれました。子の幸せを願う親の心はいつも、いつまでも、子を前に進めてくれる力になると感じます。この声は、お父様にとって一番のプレゼントですね。
勢村理紗
宗教工芸社
代表取締役社長
住田孝太郎さん
手の届かない向こうの世界に居る大切な人とのつながりがわずか三行の中に、どの作品にもよく表現されて驚きました。
誰しもに訪れる死、そして大切な人との別れ、コロナウイルス災禍の下だからこそ、胸を打つ作品ばかりでした。
香りは、大切な人や向こうの世界とを繋ぐメディアとしての役割を果たすことも改めて感じることができました。

【〈選考委員賞〉選評】

① 文音 さん 作
『この優し気な香りと共に / もくもくと白い揺らぎと共に / 天まで逢いに行けますか?』
白い香煙がまるで雲のように 作者を香りと共に 天に送り届けるようなイメージが伝わります。
② IF2 さん 作
『また君に 会えたらいいなと 想う日々 / 君といた 世界はとても ホッとした / 今 君と 繋がる手段は この香り』
14歳の作品と知ってびっくり。「心を寄りかかれる唯一の人とも もうすぐお別れの日が来てしまいます」という添え書きにドキリとしました。香りがいつまでもその人との繋がりとなりますように。
③ ぷら吉 さん 作
『香炉に挿す度に貴方とふと目が合って / 恋に落ちた瞬間を思い出して、胸がざわめく / …貴方、知らないでしょう?』
恋歌としてメロディーを付けたくなるような詩です。映像も付けたくなります。目が合うのは、魂がそっと触れることなんでしょうね。
④ 西澤美智 さん 作
『なぁ母ちゃん / 線香あげるんは母ちゃんの仕事やろ / 何で今線香あげられとるんや』
最後の「あげられとるんや」の響きに 作者の母ちゃんへの想いがよく伝わってきます。
⑤ すすすん さん 作
『お饅頭とお線香と / つたない私のお題目 / どれが一番のごちそうですか』
一番のごちそうは、やっぱり「お饅頭」かもしれませんね。でもお線香も、つたないお題目も一番のごちそうに違いありません。
住田孝太郎
フリーアナウンサー
小池可奈さん フリーアナウンサー 小池可奈さん ※ラジオ大阪「終活ラジオ ソナエ」
ご出演中
今回、皆さまの三行詩を読ませていただく機会を頂戴し、有難うございました。
お目に掛かったこともない皆さまが、愛しい家族のように思えるほど、お一人お一人に共感し、文字の奥に溢れる”お気持ち“に、目頭が熱くなりました。
何度も読み返し、胸に刻みたくなる思いの数々に触れるうちに、一枚の写真を思い出しました。
20年ほど前、私の父がミャンマーに旅し、寺院の地べたに跪き、頭をたれ、祈りを捧げている写真です。父の前には、お線香の煙が真っすぐ天に伸びていました。父の父親(私の祖父)は、ミャンマーで戦死しています。この写真を見た時、父は、私の父親であり、祖父の息子なのだと、何か深いことを教えられた思いがしました。
会いたくても会えない人と繋いでくれるのが、お線香のあの細い細い煙なのかもしれませんね。
お線香に思いを灯すたびに、皆さまのお気持ちが煙を通して大切な方々と繋がっている、三行詩にも、そんな光景を見ました。

【〈選考委員賞〉選評】

① たけじぃ さん 作
『何か欲しいものはと病床の友へ / 間に合わずにごめんなさい / 遺影に添えるボンタンアメ』
私も、たけじぃさんと同じようなことがありました。「元気になったら」ではなく、今、楽しいことを、今、嬉しいことを、大切な人としよう!そして元気になったら、もっと楽しもう!と決意したことを思い出しました。
② かなちゃん さん 作
『おばあちゃん / 辛い時は泣いていいんだよ / またその言葉が聴きたいな』
おばあちゃんを思い出す時、かなちゃんさんの「ありがとう」は、おばあちゃんに届いていますね。突然の別れは、いろんなことを教えてくれます。おばあちゃんは、かなちゃんさんに、支えになる言葉をちゃんと残されたんですね。
③ にゃばん さん 作
『普通がやっぱりえらいね / 気づくの遅すぎたかな / お父さん』
にゃばんさんのこの三行を、何度も何度も読んで、頷き続けました。「普通」って、本当に凄い!偉大です!お父様、今 微笑んでいらっしゃいますね。
④ 赤子沢 さん 作
『お母さんの命日が近づくと / 病院で私を見送った / あなたの姿が心にうかびます』
その日のお母様は、とてもとても穏やかで愛しい笑顔なのでしょうね。お母様は、赤子沢さんに伝えたい言葉を飲み込んで、笑顔で包んでいらしたのかな?そう思って、この三行は涙が止まりませんでした。
⑤ shinchan さん 作
『今度のお盆、宝籤あたるといいね。朝ドラで言ってたよ。一泊二日のこの世行きが当たるんだって。いいお線香用意して待ってるね。』
世の中GoToキャンペーン中。宝籤だけでなく、GoToキャンペーンで、あの世もこの世も隔たりなく行き来できるといいなぁと、思わず笑顔になれました。いいお線香用意して待ってるね。の、一言に、心が温かくなりました。
フリーアナウンサー 小池可奈さん
雑用の科学社
曽根原璋子さん
三行詩に寄せられた想いの数々、その少ない文字数の中に秘めた亡き方々への感謝や愛そして惜別など、いろいろなお気持ちにふれ、それぞれに情景が目に浮かび、涙し、笑い、頷き、「同じ想い」を共有させていただきました。そして、わたくし自身がとても温かで穏やかな気持ちになれました。不思議です。三行詩に込めたリアルな気持ちがもたらす威力でしょうか。この227編からたった5編を選ぶのは大変でしたが、もう一度作者の気持ちを辿りたい、という視点で選ばせていただきました。

【〈選考委員賞〉選評】

① ゆう さん 作
『あなたと同じ歳になって / とうとう追いついたかと思ったけど / 僕は僕なんですね やっと気付いた』
小さいときから慕っていたお兄様と同じ歳にたどり着いたその時、目標がなくなってしまった喪失感。悲しみを乗り越え、気持ちの整理がついた瞬間でしょうか。惜別と自立の気持ちを垣間見ました。
② マッシー さん 作
『線香の煙は天国の父母のもとに届くだろう / 仲良くやっているのかと / 子どもながらに気にかかる』
線香の煙が一筋の道となって天に向かう情景が目に浮かびます。添え書きに、父42、母91で死亡とありました。お父様が亡くなられてからの長い年月を気にする作者のお気持ちを、線香の煙に託したのではないかと推察します。
③ オウンゴール さん 作
『「葬儀なんか行ってない」と認知症の母。 / 今日も、若い頃のあなたの話をします。 / あなたはずっと、生きているのです。』
認知症を患っているお母様、素敵な想い出がお有りなのでしょうか。そんなお気持ちをそっとしておいてあげたいですね。また、そのお話をずっときかせてもらう作者も、若かりし頃のお父様を知ることができる、生きているように感じられるのではないかと思います。
④ ゆっくりこ さん 作
『大嫌いなお義父さん。 / 今でも好きではないけれど、 / 最期の「ありがと」はちょっと効きました。』
「ありがと」はちょっと効きました…。「効く」という文字が物語るように、作者の心に大きく響いたのでしょう。生前のいろいろな思いがその一言で打ち消され、新たなお気持ちになられたのではないかと、何故か安心感を得た思いです。
⑤ 千代 さん 作
『四十代で、早く逝ったお義兄さん / わがままな姉の世話に疲れたんやね。 / お姉ちゃんは、ちょっと丸くなったよ。』
一組のご夫婦の姿をみさせていただいた感じです。外からはどうであれ、お義兄様とお姉様はとても仲の良いご夫婦だったと推測します。夫に甘えることができなくなり「ちょっと丸くなったよ」という言葉に、時の流れを感じさせます。
雑用の科学社 曽根原璋子
産経新聞社
「終活読本 ソナエ」
編集長
中川真さん 終活読本 ソナエ
短い三行には、みなさんの想いがあふれんばかりに詰まっており、220篇から5篇を決めるのは、本当に大変でした。でも、選考作業は心穏やかな時間でもありました。
ご家族で交わした温かい会話、青春の胸のときめき、亡き人に言えなかった感謝の気持ち…。書き手の率直な想いが飾り気なく、ストレートに伝わってきて、まったく存じ上げない方々なのに、不思議なほど親しみを感じました。
私たちが仏壇や墓前に手を合わせ、静かに目を閉じるとき、ふと浮かぶ情景や言葉は、まさに「真実」なんだろうな、と思いました。多くの作品からは、そうした書き手の「リアル」が感じられ、一気に引きつけられました。
二行だと短すぎる。四行だと「起承転結」の説明で終わりかねない。三行詩は書き手の想いを詰めるのに、ちょうどよい「器」なのかもしれません。
同じように、お線香の香りには、手を合わせる人と亡き人が、限られた時間に同じ空間で過ごせる魔法の力があるような気がしました。
そんなことを考えながら、書き手とご家族、大切な方との「リアル」が心に響いた作品を、選ばせていただきました。

【〈選考委員賞〉選評】

① 蒲原 久博 さん 作
『母に聞く、俺は孝行息子だったかと / 遺影に上げた白いカーネーション / ほのかに香り、かすかにゆれた。』
若いころには十分にできなかった親孝行。書き手のお気持ちが「白いカーネーション」から感じられました。でも両親への想いと感謝の気持ちは、きっと伝わっているでしょう。
② 島根のぽん太 さん 作
『お母さんの認知症が進まないように / お父さんが見守ってあげてください / あの世で知らん顔されたら困るでしょ?』
認知症のお母さんの介護、きっと大変なことも多いと思います。「あの世」で困り顔のお父さんのようすも目に浮かぶようです。ユーモアあふれる作品に、書き手の心のゆとりや優しさを感じました。
③ よなちゃん さん 作
『今日きみの友人は / あんなに長いこと / 何を話していったの?』
子供部屋のドアの向こう側で交わされる友だちとの会話。「どんな内容なのかな」と気になるのが母心でしょう。お仏壇に「あんなに長いこと」手を合わせ続けるご友人を通して、当時のお気持ちを思い出されたのではないでしょうか。
④ 遥夏 さん 作
『「おばあちゃん、私、仕事しんどいわ。」 / でも、きっとあなたは笑って言うでしょう。 / 「若いっていいわねぇ。」』
ちょっとかみ合わないおばあちゃんとの会話。でも、書き手のお悩みをそっと包み込むようなおばあちゃんのおおらかさに、救われました。さまざまな苦労を体験し、それを懐かしむような「強さ」も伝わってきます。
⑤ 桐山榮壽 作
『父さん母さん御免なさい / めんつゆだと思って供えていたら / ただの昆布醤油でした』
一見、単なる失敗談みたいですが、そそっかしい息子さんに困った表情をみせるご両親と、ご家族みんなの笑い声が聞えてくるようでした。きっと、昔も似たようなことがあったのでは。そんなことも想像できて、ちょっと楽しい気分になりました。
産経新聞社 「終活読本 ソナエ」 編集長 中川真
「母の日参り」手紙コンクールの出版化を推進する
ライター・ブックプランナー
佐藤俊郎さん
手紙のようにつらつら書けない「三行」だけに、頭に思い浮かんだ言葉をそのまま記したという作品が多く、書き手のストレートで正直な今の感情が綴られている感じがしました。同時に、三行だけでは書き手と亡くなった人との関係性などはよく分からない「余白」があります。でも、この余白があるから、読み手は書き手と亡くなった人と生前どういう付き合いがあったのか、そしてどのような別れだったのかといった「物語」を勝手に想像できます。それが「三行詩」の魅力であり、可能性だと思います。
いずれにしても、こうした言葉に残し、後々読み返せることで、書き手は少しだけ自分の中で整理ができ、一歩、いや半歩踏み出せたのではないでしょうか。

【〈選考委員賞〉選評】

① ほーむ さん 作
『私はお墓に霊がいるとは思わない。 / 空の星に父が住んでいるとは思わない。 / ただあいたくて、手を合わせ、空に願った。』
「ただあいたくて」という切なる思いが、ぐっと迫ってきました。
こうした強い思いには多くの言葉は必要ないわけです。
でも、思いを伝える対象が何かなければ、伝えた感がわいてこない。
それがお墓という存在なのでしょう。
② ままん さん 作
『細く昇るお線香のけむり / 見えなかった私とあなたの / 赤い糸』
確かに、線香の細いけむりはあちらの世界に届いている気がします。
それが「赤い糸」に見えるところに、この方の悲しみにはまだまだ癒しの時間が必要だとも感じました。
③ 青い空 さん 作
『墓石の周りで 遊ぶ 子ども達 / 明るく元気な子に育っているねと / 賑やかでも 静かな時を過ごした』
大人ではできない、「墓石の周りで遊ぶ」行為。でも、こうした子供の「生」が救いにもなってくれます。おそらく若くして亡くなった故人の無念さ悲しみを遺族はひきずっているのだと思いますが、「あっ、そうだ。見守ってくれているんだ」と気づかせてくれる光景だったのが目に浮かびます。
④ ダックス大好き さん 作
『玄関を開けて、ただいまと言った。 / いつもの甘えた声は返ってこなくて / そっか、もう三日経つんだと思い出した。』
実は佐藤自身もワンコオーナーで、4年前に亡くしているので、この書き手の心境がよくわかります。いつもの日常が変わっていることを、こうした何気ない「習慣」で思い出してしまいます。
⑤ じー さん 作
『コーヒーと孫を見つめる父の顔 / さっきよりコーヒー減ったと騒ぐ孫 / 父の周りに笑顔広がる』
仏壇や遺影の何かを添えたときの「あるある」です。添えたものがなんだかなくなっている、減っていると感じる。その瞬間、故人の存在をしっかりと感じることができ、穏やかな気持ちにもなれます。
佐藤 俊郎
電子オルガン(エレクトーン)
奏者・献奏アーティスト
中村麻由さん
電子オルガン(エレクトーン)奏者・献奏アーティスト 中村麻由さん
第16期の作品を読ませていただき、皆様が日頃から亡き人との時間を大切に思い、姿形は無くとも大きな存在として感じ続けていらっしゃる事に、共感致しました。
お線香の煙に乗せて、思いを届ける・・・
香りや音楽は、〝仏へ祈りを届ける〟と聞いたことがあります。
私が電子オルガン奏者として行っている「献奏(けんそう)」。お線香の煙と同じく、亡き人と残された人を繋ぐ役目があると感じています。
「献奏」とは、音楽を捧げる、またお供えをすることを言います。
寺院の合同法要での献奏では、「天に思いが届くような気がします。」と仰っていただくことが非常に多く、きっとそれぞれの思いを音楽と共に心に抱きながら、聴いてくださっているのでしょう。
ご葬儀の献奏では、故人が生前好きだった曲や、ご家族が最後に感謝の気持ちを込めて贈りたい曲、参列者の方々へ向けて故人を忘れないで欲しいという願いを込めて献奏をされるご家族もいらっしゃいます。様々な思いを音楽に託していらっしゃいます。
献奏を執り行う者として私は、その思いを感じ、皆様に代わって天へ届けるような気持ちで、精一杯演奏しております。
“人は二度死ぬ”と言いますが、お線香をあげる時間や思い出の曲を耳にした時、亡き人を思い、心の中でそっと話しかけることで、いつまでも忘れられることなく、人々の記憶の中で生き続けるのだと、改めて実感致しました。
皆様の思いに触れられた今回の機会は、献奏にも通ずるとても貴重なものとなりました。感謝致します。

【〈選考委員賞〉選評】

① たまごやき さん 作
『お墓そうじしなきゃ。草がボーボーだね。 / お菓子は、まず仏壇に。お水かえましょ。 / あれ、じいちゃんのこと嫌いじゃなかった?』
おばあちゃんの照れ隠しだったでしょうか。とても微笑ましく読ませていただきました。
私の祖母も、祖父への愚痴をこぼしながらも、祖父の仕事を手伝い、帰りが遅いと心配し、祖父の好きな料理をせっせと作ります。愚痴をてんこ盛りに話した後にそっと、「でも、エエとこもあるからねぇ」と言います。
長年連れ添った夫婦ですから、決して見せないけれど、2人の間には深い深い愛情があるのでしょう。
「あれ、じいちゃんのこと嫌いじゃなかった?」私も何度も思ったことがあります。
② きょんしー さん 作
『再婚するなよ って笑いながら言い残したね / だから毎日お線香と共にかかさない / 大好き って私の言葉届いてるよね』
愛し愛され.. 本当に素敵なご夫婦ですね。
生死を超えた愛を感じました。
私も将来結婚して、こんな素敵な夫婦関係を築けたら…理想です。
生死を超えて永遠に、またあの世で再会する日まで、毎日の「大好き」を続けてくださいね。
③ 三郎 さん 作
『孫の指の形、オフクロとそっくりなんだ。 / 短くて不細工だけれど、ピアノは上手だよ。 / 『エリーゼのために』、聞こえる?』
私も母と全くと言って良いほどに同じ指の形をしています。そして母は祖母の手にそっくりです。
会ったことのない曽祖母の指はどうだったのでしょうか。私も、きっと私の演奏は曽祖母へ届いているに違いない!と思っています。
母とそんな話をしながら、微笑ましく読ませていただきました。
④ torako さん 作
『毎朝お線香をあげる事が故人への挨拶 / 手を合わせる事で1日頑張れるから / 忘れないよと伝える想いを込めて』
この作品には、多くの人が共感するのではないかと思います。
祖父母の家に行くと、毎朝お線香の香りがします。おばあちゃんが、お仏壇の扉を開けて、お線香をあげるのです。「おはようございます。今日も1日何事もなく過ごせますよう見守っていてください」と。そこから1日が始まるようです。
また私自身もそうですが、故郷を離れて暮らしている人も多いと思います。なかなかお仏壇やお墓へのお参りが難しくても、「忘れないでいること」が供養になると思うと、なんだか安心できました。
⑤ 杏 さん 作
『絶やさぬよう焚かれた線香の煙に包まれた / 小さな小さな貴女は、今にも起きそうだった。 / 微かに煙の香り残る毛布が、今宵も愛しい。』
私にも3歳の頃から共に過ごした猫がいました。
この作品を読ませていただいた時、その子の死んだ日のことが蘇り、思わず涙してしまいました。
添え書きに、「苦楽を共にした」とありましたが、本当にそうですね。
ペットは、家族の歩みの全てを見ています。
私もその子には、私が幼稚園に入る前から成人式を迎えるまでの全てを知られていますから。
毛布が今宵も愛おしい・・・私もあの子がお気に入りだったタオルを今でも大切に持っています。
中村 麻由
一般社団法人
ジャパンフューネラルフラワー協会
代表理事
岩田弘美さん
今回(第15期)作品選考にあたり、数日間日を置いて全作品を6回読ませていただきました。
どの作品も想いが込められていて選考することが難しかったからです。そしてその度に涙しました。
ですから人前では読めず家族のいない時間に一人静かに読ませていただきました。
大切な亡き方への想いや供養に対する事柄を踏まえ、一喜一憂しながらとても安らかな優しい時間でした。
そして多くの気付きもいただきました。僭越ながら選考させていただきました作品はその中でも特に三行から受けたインパクトと心引かれた作品です。
最後に第15期作品をお寄せ下さいました皆様に感謝の気持ちをお伝えし、私もご先祖様へ手を合わせて参ります。ありがとうございました。

【〈選考委員賞〉選評】

① よちこ さん 作
『うれしい日には華やかや香りを選ぼう / 会いたくて辛い日には心休まる香りを / ね、気づいた?今日は結婚記念日の香りよ』
三行という短い詩から〈よちこ さん〉のご主人への愛が伝わりました。
毎日のお線香と香り選びはグリーフケアとなり大切な時間ですね。
結婚記念日の香りはどのような香りなのでしょうか?甘い香りですか?
私も大切な香りを探してみようと思いました。
② ちろまま さん 作
『義両親が他界し毎朝仏壇に手を合わせる。 / 跡継ぎの嫁としての自覚からかな? / つつがなく一日が過ごせますようにと。』
私も〈ちろまま さん〉のように近年義母から仏壇守、墓守を引き継いだところなので、三行の詩に嫁としての想いが表現されていて共感致しました。
添え書きを読ませていただき、更に嫁として40年間過ごしてこられた月日と感謝の気持ちを見習いたいです。
③ 末角雄大 さん 作
『父が死んだ。7歳の頃だった。それから母は / いつも僕を守ってくれた。でも今日からは。 / そう誓って仏壇に向かう20歳の誕生日。』
20歳という節目にとても素晴らしい誓いですね。
三行を読み、添え書きを読み終える途中から涙が止まりませんでした。
頑張ってこられたお母様への感謝と想いが伝わり感動しました。
私も息子を持つ母親の立場から〈雄大 さん〉にエールを送る気持ちで選ばせていただきました。
④ ちくわぶ さん 作
『お店に、色んな香りのお線香がありました。 / お父さんはどんな香りが好きですか? / 聞かせてください。夢の中でも、いいので。』
〈ちくわぶ さん〉の言われるように店頭にはさまざまなお線香が並びどのように選んでよいか迷うことは同感です。
特に男性が香りを選ぶのは難しいのかなと思うと同時に故人への優しいさが三行に表現されていると思います。
でも本当に夢の中で知らせてくれたら助かりますね。
⑤ チャコ さん 作
『お線香の順番めぐって兄弟喧嘩しながらも / 掌を合わせる 父の遺した可愛い孫たちの手 / 私の見せたかったもの』
おじいちゃまはお孫さん達の可愛い手で手向けてもらったお線香は嬉しく、喜ばれていらっしゃるでしょうね。
「兄弟喧嘩をしながら」という表現ですが微笑ましい姿を三行から想像でき、読んでいて優しい気持ちになりました。
そして私も幼き頃、妹と同じような喧嘩をしたことを思い出させていただきました。
一般社団法人ジャパンフューネラルフラワー協会
代表理事 岩田 弘美
産経新聞社
「終活読本 ソナエ」
編集長
深堀明彦さん
第14期の作品を読ませていただきました。それぞれに心を打つ作品ばかりで、その中から「選ぶ」ということの難しさを実感しました。
三行詩に限らず、詩の良さは「共感」にあると思います。その意味で、今回は私の心の奥底に強く共鳴する何かを感じた作品を選ばせていただきました。
人は他界しても、人々の記憶に残る間は生きているといえるといえるのではないでしょうか。仏壇や遺影に手を合わせて、故人と心の対話をし、あるいは家族で思い出を語り合う。そうすることで、故人が心に生き続けることになるのでしょう。
故人との心の対話は、自分自身の日常を振り返り、明日につなげていくことができるものだと思います。それが、常に礼儀正しく、嘘をつかず、海外のスポーツ大会で会場のゴミを拾うような日本人の素養の高さにつながっているのではないかと感じています。
お線香の香りが漂う中で、心静かに、亡き人を想う。大切にしたい習慣ではないでしょうか。

【〈選考委員賞〉選評】

① もと吉 さん 作
『今日もたくさん話せました。/ でも、やっぱり1本の時間じゃ短いです。/もう1本、お線香をあげてもいいですか。』
今は亡き親しい方と話し込んでいるうちに、お線香が燃え尽きてしまう。話の続きをするために「もう1本」。そのお気持ち、本当によく分かります。作者と故人の心の対話の様子を想像するだけでこちらも心が和みます。まさにお線香は「こころの携帯電話」ですね。
② ハムハム さん 作
『春に出会い 秋に亡くなったあなた / 「毎年花見をしよう」と言ってくれました / あなたのお墓は 今年も桜が綺麗ですよ』
これは切ないですね。がんで急逝されたそうですが、きっと優しい彼氏だったのでしょう。亡き恋人のお墓にお参りして、“一緒に”花見をする姿を思い浮かべると、涙を誘います。桜吹雪の中で、作者の心が温められることを願ってやみません。
③ ベンジャミン さん 作
『帰省するたび仏壇に手紙を供えてくれる。/ 共に過ごした記憶は四歳までしかなくても、/ 孫の心の中にお父さんは生きているよ。』
帰省するたびに「じいじに挨拶する」と言ってくれるそうですが、なんと優しいお子様でしょう。きっと、作者がお父様の思い出をいろいろ語っていらっしゃるのでしょうね。お父様もお子様が心身ともにすくすくと成長されることを一番の楽しみにされているはずです。
④ ねこばあば さん 作
『八百万のご先祖さま / トップランナーが誕生しました。/ 初孫へ声援をよろしくお願いいたします。』
家系図は大樹を連想させますよね。ルーツをたどればたくさんのご先祖様がいらして、子孫という枝葉が伸びて大きく茂ってゆく。その最初の若葉が芽生えた喜びがストレートに表現されています。報告を聞かれたご先祖様も大いに祝福されていることでしょう。
⑤ そらとぶ子 さん 作
『今、そうそうって相槌うってるよね / さっき、がんばれって叫んだよね / お父さんは、見えない私の応援団長』
仲の良い父娘でいらしたのでしょうね。まさにお父様は作者の心の支えでしょうか。父親というのは心の中では応援団長を自任していても、娘に対して気恥ずかしさを覚えるもの。その亡き後に、こうして娘に理解してもらえるなんて、父親冥利に尽きますよ。
産経新聞社 「終活読本 ソナエ」 編集長 深堀明彦
女優 高島礼子さん
女優 高島礼子さん
《事務局より》今回、「母の日の思い出」こころの三行詩の選考委員をお務めいただいた高島礼子さんは、ご自身が二十歳の時に亡くされたお母様のご命日に近い「母の日」こそ、『年に一度でいいから母に会わせて』と願わずにはいられない大切な日、とその胸中を以前にお伺いした経緯から、本企画に最もふさわしい方と熱望し、特別にお引き受けをくださった次第です。 高島さんからは、『みなさんの作品に触れて、お住まいの地域も歩んでこられた歴史も思い出も様々ですし、男女の違いも大きいはずなのに、“母”に対するそれぞれの想いはみんな共通しているんだ、ということに新鮮な感動を覚えました』 『子どもの頃の自分を思い出してもいいし、母のことだけを一日中想っていられる「母の日」…。その有り難さをあらためて噛みしめる貴重な機会となりした』との総評と共に、〈選考委員賞〉入賞作5篇に対し、次の選評を頂戴いたしました。

【〈選考委員賞〉選評】

① らむね さん 作
(愛知県・27才・女性)
小さい頃にプレゼントしたマッサージ券。
ずっと保管しててくれたんだね、お母さん。
肩揉みして! その声がもう一度聞きたいよ。
〈添え書き〉
母が一昨年亡くなり、タンスの整理をしていたら使いかけのマッサージ券が出てきました。昔から母は肩こりに悩んでいてよくマッサージしていました。見つけた時は母から肩揉みをお願いされることも母に触れることももう出来ないので悲しみが込み上げてきましたが、大切に私のプレゼントを取ってくれていた母への感謝でとても温かい気持ちにもなりました。
私もやりましたね、「肩を揉んだり脚を踏んだりしたら10円」とか…。
そういう懐かしい情景を、この作品を読んで想い起こしました。
② 次男坊 さん 作
(鹿児島県・62才・男性)
母という字は、口の中に ÷ (割る)がある。
羊かん、饅頭、子どもの数に割ってたなあ。
自分も食べたかっただろうに。
我が家でもよくありました、今は自由にたくさん食べられる時代ですけど。
母は本当に子どもの分だけ割ってくれて、自分の分はいつもなくて…。
次男坊さんの気持ち、よく判ります。
③ タコタコタコ さん 作
(神奈川県・75才・女性)
お母ちゃん、母の日に欲しいもんなんねえ?
家族が笑っとってくれれば、なんもいらん。
母の日は「ハハハの日」。
〈添え書き〉
とにかく明るい母でした。「笑う門には福来る」がモットーで、「笑顔をつくるのは自分なんだよ」とよく話していました。77歳で亡くなりましたが、笑みを浮かべての最期だったそうです。
本当にお母様が明るくて、家族が笑ってくれたら、それだけで幸せという方だったんですね。とても温かいメッセージに触れた想いです。
④ 島根のぽん太 さん 作
(島根県・49才・女性)
母さんにあげた赤いカーネーション
なぜかお祖母ちゃんの部屋に飾ってあったね
そんな母さんが大好きです。
お母さんも嬉しいし、そのお母さん(お祖母ちゃん)も孫からということで、最高じゃないですか、赤いカーネーションが運んでくれる「幸せの連鎖」。
とても素敵なメッセージでした。
⑤ kiku さん 作
(大阪府・59才・女性)
年を取るほどにますます母に似て来た
自分が洗面台の鏡に映るたびに
母がそこにいるようで、懐かしくなります
〈添え書き〉
2010年に亡くなった母。 以前から母親似でしたが、この頃、鏡に映る自分が母の面影と重なってしまいます。
私も母親似なんです。今の私よりもう少し若い時に亡くなっているんですが、確かに似てきたな、というかむしろソックリな感じで、鏡を見るのがちょっと怖いくらい(笑)。
今まで思い出せなかった母親に言われたこと、叱ってくれたことや褒められたこと、顔に関しても「ちゃんとしっかりした顔してなきゃダメ」みたいな戒めの声が甦ってきて…。
とても共感できる作品でした。
高島 礼子

「母の日の思い出」 こころの三行詩 ・全応募作品はこちら

一般社団法人
日本石材産業協会
広報委員長
上野國光さん
このたび第13次募集の応募作品を読ませていただき、祖父、祖母とのほほえましいエピソードを詠んだ三行詩と共に、亡くなって気づいた親の有難さを詠んだ三行詩が数多くありました。
石材店としてお客様と接する時に最近よく耳にする言葉があります。「子供には迷惑かけたくない」という言葉です。個人的には、かなりこの言葉に違和感を覚えながら接客をしています。なんだか「プツン」と糸が切れるような感覚です。 「親が子を思う気持ち、子が親を思う気持ち」は、人が人として持ち合わせている未来永劫変わる事のない根本的な思いです。核家族で離れて暮らす家族関係が多くなっています。離れていても親子の関係性を親密に保てるような工夫が必要な時代となってきたようです。若い世代の方に「そろそろ親の事を考えてみませんか?」と語りかけていく必要があるのかもしれません。

【〈選考委員賞〉選評】

① 明子 さん 作
『お父さんが生きていた頃よりも、/ 毎日お仏壇で手を合わせている今の方がほうが / 沢山話をしているかもしれないね。』
何気ない三行詩ですが、親を亡くされた経験のある方には、「そうそう」と納得される三行詩ではないでしょうか。仏壇が置けない家庭の方は、こうした空間を何かしら工夫してしつらえていると思います。どんな空間になっているのか? 供養産業に従事するものとしては気になります。
② 小林はる さん 作
『泣き虫な私にも子供が生まれました / お父さんから名前を一文字もらったよ / お父さんみたいに強い子になりますように』
親を思う子供の気持ちが素直に伝わります。今も、ずっとお父さんの事を大切に思っている事が伝わります。
③ やまかっぱ さん 作
『そばに居るのは分かっています。/ だけどそれだけじゃ寂しいのです。/ たまには笑顔を見せてください。夢の中でも。』
投稿された方の年齢からすると若くしてご主人を亡くされた方です。気丈に過ごされているのでしょう。でも、せめて夢の中でも語り合いたい。切ないですね。悲嘆が回復されることを只々願うばかりです。
④ やしゆり さん 作
『赤貝ときゅうりの酢の物つくったよ / 「なつかしい」 / ばぁばの味みんなの中で生きてるよ』
「みんなの中で生きてるよ」が「つなぐ」と重なり目に留まった三行詩です。おばあちゃんの味を代々つないでいく。大切な事です。皆が「つなぐ」事を忘れてしまった世の中は、どうなるのでしょうか? 想像がつきません。
⑤ 孝行娘 さん 作
『親孝行せな化けて出るぞ、が口癖だった父 / 13回忌を迎えた今も出てないってことは / 私は親孝行な娘だったってことかな?』
親孝行という言葉を耳にする機会が少なくなったような気がします。あえて、子に気遣わない関係性を築かれていたお父さんに賛辞を贈りたい作品です。
最後に、選考委員としての役目をいただけた事に感謝しております。皆、素晴らしい作品でした。迷いました。そこで、選考する上では、石材店としての経験を踏まえた視点で読ませていただきました。 お墓を作り終えた方の感想の中に「故人を偲んで、あれやこれやとお墓の形や文字を考えていたら気持ちが落ち着いた」と話される方が数多くいらっしゃいます。お墓作りも悲嘆の回復につながる1つの手段となっていると確信しております。 一般社団法人 日本石材産業協会 広報委員長 上野 國光
上智大学グリーフケア研究所
特任所長
髙木慶子先生
《事務局より》第12次募集期の応募作品における〈選考委員賞〉選出にあたりまして、上智大学グリーフケア研究所・特任所長の髙木慶子先生にお願いいたし、けっして優劣をつけるような審査ではなく、“心惹かれた・強く印象に残った作品”について、あくまで個人的なご感想をお寄せいただく、とのご理解をもって、特別にお引受けをいただきました。
髙木先生からは『どれを選んだらよいのか、迷いに迷いました。どれも素晴らしい表現力と訴える力のあるものだけでした』との賛辞と共に、規定の5篇を超える7篇をお選びいただき、併せて次の選評を頂戴いたしました。

【〈選考委員賞〉選評】

① のんのさん 作
『爺ちゃんが大好きだった、7歳の孫は / 遊びに来ると、うがい、手洗い、お仏壇へ / 小さな手を合わせ、何をお話ししているの。』
7歳のお孫さんの、おじいさまのお言葉を大事にし、仏壇の前で、かわいいおててを合わせて祈っておられる姿が、ほほえましいですね。
② そらさん 作
『母さん、向こうで孫娘に会えましたか? / 娘は一足先に天国へ旅立ちましたが、 / 貴方より先輩です、色々教わって下さいね。』
お子様を亡くし、さぞかしお辛い日々だったことと思います。また、お母さんを亡くされ、重ね重ねの悲嘆だったことと思いますが、せめて、お二人がご一緒と思われるときに、慰めを感じておられるのでしょう。
③ 風堂さん 作
『昭和三十一年二月四日生まれの弟よ / 昭和三十一年二月六日に死んだ弟よ / 共に酒を飲み 話をしたかった』
兄弟愛を見事に表された文章ですね。この世に3日間だけの存在だった弟に対する兄としての温かい愛情が伝わってきます。この世に何年生きたかではなく、存在した弟が尊く大事なのですね。
④ ゆきなさん 作
『お父さん。この春私は、結婚しました。 / 苗字が変わっても、どんなに月日が経っても / これからもずっとあなたの娘でいさせてね。」』
とてもうれしい娘としての喜びと誇りが、読む人の心を温めてくれますね。平凡な文章だからこそ、輝いているように思います。
⑤ 恵美さん 作
『「なんかあったら連絡せえよ。」 / 地元を離れる私への合言葉 / 今はそこから見守ってくれてるかな。』
何とほのぼのとした家族愛でしょうか。両親の娘に対する心配と、それを受け止めている娘さんの気持ちが嬉しいですね。
⑥ 岡山凡夫さん 作
『昌子よ。お前が逝ってもう八年が過ぎた。 / 今日は七日正月だ。また七草粥を作ったぞ。 / どうだ、美味いだろう。お代わりもあるぞ。』
8年たっても妻への思いが鮮明なご主人、愛し合っていたことの証明でしょう。悲しみと幸せだった時の思い出が混じっている心情でしょうね。
⑦ みさみささん 作
『お腹の中で亡くなってしまったあなただけど / 亡きお義父さんと一緒にいて / 見守ってくれているのを感じています』
顔も見たことにないお子様に対する母親としての愛情が、痛いほど伝わる文面ですね。でも、義父との出会いで、辛さがおおわれているようで、ほっとする文章です。
上智大学グリーフケア研究所 特任所長 髙木 慶子
産経新聞社「終活読本ソナエ」
編集長
赤堀正卓さん
今回(第11次募集に)応募された全ての作品を読ませていただき、たった三行分の文字数しかないのに、大切な故人との関わりを言葉にすると、故人の生きようはもちろん、子孫、家族や遠い先祖までのつながりが文面に浮き上がってくることに新鮮な驚きを感じました。
故人となって何年たっても悲しみが癒えないことを詠んだ作品がある一方で、悲嘆の回復が読み取れるものも多くありました。グリーフの複雑さ、個別性を感じました。

【〈選考委員賞〉選評】

① 桐山榮壽さん 作
『不思議ですね / あんなに悲しかったのに / 今は一緒に居るようです』
深い悲嘆からの回復(グリーフケア)段階に差し掛かった心のありようが、優しさのあるシンプルな言葉で表現されていました。
② ぴこさん 作
『無口で亭主関白だった父さんが日々 / 仏壇の母さんに花をあげ水をあげご飯をあげ / 愛を語っています』
作者の心と、お父さんの心、そしてお母さんの存在が無言の中に重なりあって伝わってきます。
③ おしんこさん 作
『大好きな、祖父母に会いに帰省する度 / 満面の、しわくちゃな笑顔で迎えてくれたね / 「よー来たな。婆さんコーヒー淹れてくれ」』
幸せだった時間の光景が、ありありと目に浮かんできます。「お茶」ではなく「コーヒー」という点が現代っぽいです。
④ 六月真仔さん 作
『貴方の墓前で涙目で手を合わせています。 / 幼い娘はご機嫌で走り回り、言いました。 / 「パパ、死んでないで早く一緒に遊ぼうよ」』
応募作品中で最も切ない三行詩でした。でも、力強く生きていこうとする明るさが、子供の無邪気さを通じてほんのりと伝わってきました。
⑤ ひっこさん 作
『1度でもいいから、また会いたい。 / ところで、おじいちゃん、おばあちゃん。 / お宝残したのに言い忘れたってことな~い?』
全体の作品の中では異色です。でも生前の深く、温かい関係が、没後も保たれているからこそ、こういう発想が出てくるのだろうと思います。故人と遺族の関係って、生前のように遠慮ない間柄だといいですね。
どの作品も、それぞれの心の内が表現されて甲乙付け難かったです。
選ぶにあたっては、次の2点を重視しました。
ひとつは「心の携帯電話」「グリーフケア」というコンセプトを自分なりに考え、整った作品というよりも、気持ちがストレートに出たものを選びました。作品の表現が整っていなくても、気持ちが表れたものを選びました。
また「お線香」がストレートに露出するよりも、作品を読んで、ほんのり香りが漂ってくるようなイメージがわく作品を選びました。 産経新聞社 「終活読本ソナエ」編集長 赤堀正卓
・・*senses*・・ さん
故人を偲び素直な気持ちと向かい合うひと時  けっして自分は独りではない・・・と感じるでしょう。
言葉にすることで また大切な人とつながるような「こころの携帯電話 三行詩」  すてきな活動だと思います。
nyankotyan さん
線香は心の携帯電話 切なくも優しい響きの言葉は 沈んだ心にグットきます
線香を通じて亡くなった方と お話するのは 仏壇の前で線香の香りと共に 自分の心と向き合える 大事な時間だと思います
皆さんの三行詩と共に絆を大切にするつもりです
すずらん さん
大事な人と もう会えなくなる
これは生きているわたしたちにとって とても悲しくつらいことであります
でも  目をとじれば いつでも 大事な あの人にあえる
わたしは 元気で がんばってますと  こころの中で 伝えることができる
わたしの選ばせていただいた作品は そういった前向きな作品を選ばせていだたきました
じゅんぼんじょび さん
ご先祖に感謝の気持ちはいつも持っていますが、なかなか素直に口には出せません。
私も帰省して父に線香をあげて、無言で伝えるのは、いつも愚痴や弱音ばかりです。
三行詩なら、素直に言葉で伝えられそうです。
gomame さん
私も大切な人を想いながら 毎日手を合わせていますが
投稿された三行詩には そんな自分の想いと重なるものも多く
大切な人との思い出や想いが 多くの人の心の支えになっていることを
三行という短い文章の中に 強く感じることができました。
ままこ さん
どの作品も無くなった方をいとおしむ優しい想いに満ちあふれていて感動しました。
いつまでも残された方々の心の中に沢山の想い出が残っていると良いですね。
とても素敵な企画です。

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