やさしい時間~こころの携帯電話ひろば~

グリーフケアへの誘い


制作協力 ソナエ
別れの悲しみに寄り添い、そなえるための学びの章

葬儀のグリーフケア機能

葬儀のグリーフケア機能 多くの場合、大切な人が亡くなれば葬儀をします。葬儀には、非日常的な儀式を通じて死を現実として受け入れやすくする意味があるといわれています。例えば、遺体を清める「湯かん」や、最近だと亡くなった人に化粧を施す「エンゼルメイク」も、冷たくなった故人の体に直に触れることで、死の事実を実感として受け止めざるを得ないという機能がありました。もはや姿さえとどめていない焼骨を拾って骨壺に入れる「収骨」も同様です。

 また、葬儀はグリーフの様々な症状である、泣き叫んだり、怒ったりといった行動が公に許容されている場でもありました。思う存分、感情を表に出してもよい空間でした。同時に、故人に縁のある人たちが集まることで、故人の思い出話を語り合ったり、一緒に悲しみを共有したりする。そのことで遺族は故人をしのびながら、「悲しいのは自分だけではない。孤独ではない」という感覚を得て、支えられていることを実感する場でもありました。葬儀にはグリーフケア機能があったのです。

 高度成長期ごろまでは都会でも近所の人たち、つまり地域コミュニティが主体となって葬儀を出していました。しかし、地域コミュニティの弱体化に伴い、葬儀社や互助会といった葬送専門業者が中心となった葬儀が普及します。地域の代わりに「職場」が一種のコミュニティとして遺族を支えるようにもなりました。

 さらに最近では、グローバル化で終身雇用制が揺らぎ、非正規雇用が増えたこともあって、職場もその機能を低下させています。家族やごく親しい人たちだけで葬儀をする「家族葬」が目立っています。葬儀をせずに火葬するだけの「直葬」も増えてきました。グリーフケア機能もあった葬儀の変化が、グリーフにどのような影響を与えるのか。注目されるところです。

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