グリーフやグリーフケアに関して参考になる本をいくつか紹介します。まずは、手に取りやすい新書から、『死別の悲しみに向き合う グリーフケアとは何か』(坂口幸弘、講談社現代新書)。現代の社会状況を踏まえた実践と学問的成果がわかりやすく書かれます。グリーフに関心をもったときに読むのに適した一冊です。精神科医の故・小此木啓吾さんが著した『対象喪失―悲しむということ』(中公新書)は、悲嘆の心理過程と立ち直りについて説いた古典です。
学問的な入門書としては、上智大学グリーフケア研究所・特任所長の高木慶子さん編著の『グリーフケア入門 悲嘆のさなかにある人を支える』(勁草書房)があります。
現にグリーフにある人や、そんな人を支えたいと思っている人には、『死別の悲しみを癒すアドバイスブック 家族を亡くしたあなたに』(キャサリン・M・サンダーズ、筑摩書房)。17歳の息子を失った米国の臨床心理学者が著しました。自身の体験のみならず、研究者として多くのセラピー体験や聞き取りを行ったうえでの考察と臨床への応用です。
『悲嘆とグリーフケア』(広瀬寛子、医学書院)は、サポートグループ運営の際の注意点などを学べます。グリーフに陥りやすい看護師へのケアにも重点を置いています。上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケンさん『よく生き よく笑い よき死と出会う』(新潮社)は、最終講義をベースに、死をどう乗り越えるかについて書かれたものです。
他者の経験を知ることで癒やされることもあります。気象エッセイストの倉嶋厚さん著『やまない雨はない 妻の死、うつ病、それから…』(文春文庫)は、妻を亡くして自死を試みたあと精神科に入院し、回復するまでの手記です。作家の故・城山三郎さんが、ガンで先立った妻への思いをつづるエッセー『そうか、もう君はいないのか』(新潮文庫)。書名は、亡くなった妻にふと語りかけてしまい、つぶやく言葉です。柳田邦男さんの『犠牲(サクリファイス) わが息子・脳死の11日間』(文春文庫)は、自死を図り脳死となった息子の腎臓を提供するまでをつづったドキュメント。帯に「父と子の魂の救済の物語」とあります。自死者の遺族会がまとめた手記『会いたい 自死で逝った愛しいあなたへ』(明石書店)は、グリーフとはどんなものかを突きつけます。
最後に、「セカチュー」こと『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一、小学館)。読まれた方が多いかもしれません。書き出しはこんな文章でした。<朝、目が覚めると泣いていた。いつものことだ。悲しいのかどうかさえ、もうわからない。涙と一緒に、感情はどこかへ流れていった。> 恋人の死からグリーフが続く主人公が、新たな人生に向けて歩みます。