やさしい時間~こころの携帯電話ひろば~

グリーフケアへの誘い


制作協力 ソナエ
別れの悲しみに寄り添い、そなえるための学びの章

日々の供養とグリーフケア機能

 日本の仏教では宗派による違いはありますが、葬儀が終わってからも法要が続きます。よく知られる「四十九日」に至るまで7日目ごとに追善供養するのを皮切りに、百ヵ日、一周忌、三回忌、七回忌などと続き、一般的には三十三回忌で「弔い上げ」とされています。関西では月々の命日である「月命日」に、僧侶が自宅まで来て法要することが、まだ広く行われています。

日々の供養とグリーフケア機能 特に初期の四十九日までを手厚く法要することは、グリーフケアの観点からみれば、理に適っているといえます。精神的に一番不安定な時期に、法要を通じて亡き人と向き合う。法要は近しい家族だけが集まってすることが多いことから、思い出を共有しながらお互いの正直な気持ちを確認しあい、支え合う場となりうるのです。また、僧侶一人ひとりの資質や遺族との関係性によって大きく左右される点ではありますが、僧侶は第三者であると同時に、法要を通じて遺族と持続的に関わり続けることから、遺族の変化に気を配り、立ち直りを支える役割を果たす可能性もあります。

 仏壇の存在も、グリーフケアには有効だと指摘されています。線香に火をつけて気持ちを落ち着け、食事を供え、日々の出来事や悩みを、遺影や位牌の置かれた仏壇に語りかける。まるで故人がそこにいるかのように、毎日「会話」する場が身近にある。亡き人が「あの世」などといわれるどこかで暮らしており、自分が亡き人から見守られているという感覚、安心感。心のよりどころとして仏壇が役立っているといわれるのです。墓参りで故人に語りかけるのも、お墓が故人と繋がる場として機能しているといえるでしょう。

 最近は、仏壇継承者ではなくとも、遺影と共に遺骨の一部を小さな置物の中に入れてリビングに置いたり、ペンダントに入れて身に着けたり、身近に故人を感じることのできる“よすが”を求める人も増えています。「手元供養」といわれます。これも仏壇と同じような役割があるかもしれません。また、お盆になると亡き人が帰ってくる。この習俗も、亡き人と自分が繋がり続けていることを確認する行為といえます。

 最初は、悲しみや怒りが強かったグリーフの症状も、日々の供養を通じて亡き人と繋がり続ける感覚が得られることで徐々に和らぎ、新たな生活へと歩んでいく。日本人の古くからの「知恵」が生かされたグリーフケアといえるのではないでしょうか。

このページのトップへ